雪が降らず、冬場の気温が0℃以下にならないような地域では、あまり気にすることがない冬場の運転。しかし、山間を進む・寒冷地に旅行するなどのケースでは、知識不足・対策不足が命の危機につながることも。
一口に冬場の運転リスクと言っても、故障・トラブル・バッテリー・タイヤ交換に関するものなど、実に様々です。もちろん、ブラックアイスバーンなどによる交通事故も起こりやすくなります。
今回は、冬場の運転リスクについて、一般的に起こりやすいとされる故障・トラブルの種類から寒冷地ならではの注意まで、主なものをご紹介します。普段から注意している人はもちろんのこと、あまり冬場だからといって注意したことがない人も、これを機にケアを意識してくださいね!
目次
一般的に見て、冬場に起こりやすいトラブルの数々
まずは、一般的に見て、冬場は特に起こりやすいとされているトラブルについてご紹介します。どれもよく聞く症例ですが、定期的に車をチェックしていれば防げるものも少なくないため、自分は大丈夫と思わないことが大切です。
寒い時期に多いのがバッテリー上がり
JAFに救援を依頼するケースで最も多いのは、過放電バッテリーだという統計が出ています。特に夏・冬に起こることが多く、エアコンの使い過ぎや気温低下による化学反応の鈍さから、バッテリー容量が減少することで発生します。
冬場は、日照時間の減少により、ヘッドライトを使う時間が長くなります。また、新しい車になればなるほど電気系統も複雑になり、使用する電気も増える傾向にあるため、バッテリーの減りを助長します。
タイヤに関する問題も増える
地域によっては気にしなくても問題ありませんが、冬場に外気温が0℃を下回る環境では、スタッドレスを装着する必要があります。スタッドレスは、夏タイヤに比べると使用する期間が短いことから、保管状況が悪いとパンク・バーストを引き起こしやすくなります。
走り出す前には空気圧を確認する・交換する場合はセルフではなく工場に依頼するなど、タイヤの状態をきちんと見てくれる環境で交換すると、パンクのリスクは少なくなります。
また、スタッドレスタイヤの寿命は長くて3シーズンと言われるため、定期的に新品に買い替えることも忘れないようにしましょう。
やっぱり多い交通事故
冬場は、積雪の有無にかかわらず、交通事故のリスクが高まる季節です。内閣府の調査でも、秋から冬にかけて交通事故が多くなっていることが統計で示されており、これは全国的な傾向と推察されます。
冬場に交通事故が多くなる理由は、季節の面・暦の面での理由が考えられます。季節の面では、路面の凍結・積雪などの直接的な原因だけでなく、日没が早くなったことによる視界の悪さが影響しています。
就業時間は変わらず、退社時の明るさが変わるわけですから、その分だけ帰宅ラッシュの事故リスクが高まります。秋冬の日没は早く、薄暮れは特に事故が起こりやすいため、早めのヘッドライトと十分な視界確保が必要です。
また、冬場は一年の終わりを迎えるため、暦の面でも緊張感が薄らぎます。忘年会・クリスマスなど、シーズンを通して浮かれやすいイベントが多く、気のゆるみから事故に至るケースが増えるのです。
飲酒運転は厳罰化の傾向が進んでいるものの、残念ながら日本から根絶されたわけではありません。この記事をお読みのドライバーなら大丈夫だと思いますが、くれぐれも「飲んだら乗るな・乗るなら飲むな」を改めて徹底してくださいね。
故障の原因になる?気を付けておきたいエンジンルーム
一般的なリスクについて触れた上で、続いては冬場のエンジンルームに関する問題を解説していきます。むき出しの外気に触れる機会が多い車にとって、その寒さはエンジンにもシビアな影響を与えるため、十分なケアが必要です。
エンジンオイルの種類に気を付ける
エンジンオイルは、温度によって粘度が変化するという性質を持っています。温度が低くなることで、流動性が失われて硬くなり、エンジンの動きにも影響を及ぼします。
オイル交換の時など、エンジンオイルの種類・温度の耐性について、それほど意識しない人がほとんどだと思います。しかし、実は分類表示の中に「どのくらいの寒さ・暑さに耐えられるのか」が書かれています。
例えば「10W-40」という表示があった場合、これは「-20℃~40℃」までなら粘性を保てるという意味になります。5Wであればー30℃・15Wであれば-10℃までが粘性を保てる下限です。
オイルについては、車に乗る地域に応じて工場などが選んでくれますから、あえて自分で意識する必要こそないものの、念のため覚えておきましょう。
ヒーターが効かないまま
冬場はもともと、寒さのせいでヒーターが効きにくい傾向にあります。しかし、ある程度時間をかければ車内が暖まるため、本来ならそれほど深刻に考える必要はありません。
しかし、いくら時間が経過しても、車内が全く暖まらないことがあります。このような場合、温度調節に不可欠な部品の一つ「サーモスタット」に影響が及んでいるケースを疑います。
車の暖房機能は、ガソリンを使うキャンピングカーのFFヒーターなど一部を除いて、エンジンの熱を利用します。エンジン自体が高温であることから、そのまま熱を車内に送風するだけで事足りるのです。
サーモスタットは、エンジンを冷やすための冷却水を通すゲートのような役割を担っており、車内に必要な分だけ熱気を移動させる機能も備えています。
ところが、この動きが鈍ってしまうと、サーモスタットのゲートが開きっぱなしになり、熱が足らずに車が暖まらないケースが出てきます。車に長時間乗っていても車内が暖まらないようなら、一度サーモスタットの故障を疑いましょう。
冷却水にも注意が必要
エンジンを冷やす機能を持つ冷却水は、冬場の寒さによっては必要ないのではないかと考える人もいますが、もちろん必要なものです。ただ、冬場に注意すべきなのは、冷却水の凍結です。
基本的に、冷却水には寒冷地で凍らないよう、添加剤が含まれています。ただし、冷却水には凍らない一定の濃度があり、概ね濃度50%で-36℃までなら大丈夫だと言われています。
冷却水の濃度は一般的に30~50%となっており、何らかのトラブルで冷却水を希釈した場合はもっと濃度が低くなります。すると、本来なら凍るはずのない温度でも凍ってしまうおそれがあり、エンジンに深刻なダメージを与えます。
セルフケアが中心になっている・古い車に乗っているなどの場合は、念のため冷却水の種類にも気を配りましょう。
寒冷地ならではのリスクも
寒さが厳しい寒冷地では、車の重要パーツ・内部に関する問題だけでなく、車のあらゆるパーツに対して「寒冷地仕様」の装備が求められます。極端な話、ウォッシャー液からワイパーまで違うため、九州から北海道にフェリーで引っ越した人などは、装備の全取り換えも検討する必要があるでしょう。
ウォッシャー液の耐寒温度に注意
あまり考えたことはないと思いますが、ウォッシャー液をコンビニで買える地域があります。それは北海道などの「超」寒冷地です。
暖かい地域では、ウォッシャー液を希釈して使うドライバーもいるようですが、寒冷地では原液で補充するのが基本です。耐寒温度は-30℃以上となっており、厳しい冬の外でも凍らないよう、そのような形で売られています。
なぜコンビニで購入できるのかというと、それはもちろんドライバーだけの問題ではなく、地域住民が水道凍結防止のために用いることもあるからです。不凍液をホームセンターで買うよりも手軽で安いため、コンビニにウォッシャー液の原液が売られているのです。
こちらは、北国に引っ越したばかりの人は知らない話のため、十分に注意しましょう。不安であれば、一度工場に持って行き、寒冷地が初めてであることを伝えた方が賢明です。
鍵が回らない・ドアが開かない
外気が冷えると、暖かい地域では信じられないことが車に起こります。「ドアが凍る」のです。
キーシリンダー自体が凍っており、リモコンドアロックでも反応せず、さらにはドアのゴムパッキンまでもが凍るという状況。初めて経験した人は、絶望すら感じるでしょう。
しかし、もちろんそんな時の対処法があり、シーズンになるとスプレー型の融雪剤が手に入ります。これでドアのキーシリンダーやドア周りの隙間にスプレーすると、多くの場合はすんなりドアが開きます。
あとは、エンジンをかけてしばらく待つだけで、車内が暖まりドアの氷もとけます。マニュアル車など、エンジンスターターが使えない車種は特に注意しましょう。
雪対策は要注意
積雪は、車にも容赦なく影響します。車庫などに車を収納している場合を除き、青空駐車場に車を停めたまま放っておくと、もれなく車に雪が積もります。
車の雪を落とす際に、雪が降る経験の少ない地域では、結露取り用のスクレーパーなどで雪かきをすることもあるようですが、寒冷地では雪の量から考えてまず無理です。
スノーブラシやコンパクトスコップなど、雪をルーフから落とすこと・周囲の雪を除雪することに特化したものを選び、素早く雪かきができる装備を整えましょう。
また、ワイパーも夏用・冬用があり、冬用は雪などをフロントガラス・リアガラスから取り除くため、ゴム部分も厚くなります。夏用で重たい雪を連続してぬぐうのは難しく、吹雪になるとほとんど役に立たないため、こちらも注意が必要です。
おわりに
冬場の運転リスクは、お住まいの地域によってケアする範囲が変わってきますが、地域を問わず共通している要因もあります。それぞれの要因に対して、適切に対処することを意識すれば、未然に事故を防ぐことにつながります。
事故が増える時期であることを自覚し、物理的な要因・精神的な要因を理解した上で、適切な対策を講じることが大切です。また、寒冷地に向かう際は、運転の勝手が大幅に異なる点にも注意しましょう。
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